タイ料理屋で働いていた頃の話・その1

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もう十数年以上も前になるけれど、ボクは日本にいた頃タイ料理店で働いていたことがあります。自分でタイ料理屋をオープンする直前まで、3店で都合5年ちょっとぐらい。前にも書いた通り、ボクがタイにハマった一番の要因がタイ料理だったので、気がついたらタイ料理屋で働くことになってたのです。

先日、読者の方からメールを頂いて少しやりとりしていたのですが、そこで出てきた話題の一つが「どうしてタイ、バンコクだったの?」というものでした。その時に改めて考えてみたのです

スーツ着て営業マンしたり、SEしたりした時期もあったのですが、ある時東京でとあるタイ料理屋がオープンするのにあたって日本人の店長を探している、という話がボクのところまで回ってきました。毎年タイに遊びには行っていましたが、日本に帰ってくるとタイ料理自体がなかなか食べられない(高い!あんまり美味しい店もない!)ので、いっそタイに行っちゃおうかなぁ…とか思っていた時期なので、渡りに舟!と快諾。そのとあるタイ料理店の店長として働き始めたのです。当時、飲食店の経験自体は8年ぐらいでしょうかね。

その店は、今思えばタイ人オーナーの意向が色濃く反映されていて、なんというかハイソな感じのタイ料理屋でした。好きなんですよねぇ、お金持ってるタイ人てそういう雰囲気。タイ料理屋、というかタイ料理レストラン、という趣なわけです。『タイ宮廷料理』とかついちゃう感じ。ボクは店長として入ったのですが、なんとスーツ着用。恭しくお客様を迎える感じです。自分の思うタイ料理店との違和感を感じつつも、日々タイ料理を勉強してました。厨房もフロアのスタッフも全員がタイ人。当時のボクはタイ語でわかるのは挨拶と数字程度、フロアのアルバイトスタッフであった留学生の子達が英語&カタコトの日本語を話すので、それを頼りにコミュニケーションを取っていましたが…ぶっちゃけコミュニケーションとか取れないです、そんな程度だと。しかもタイ人の文化とか、考え方も全くわからないので日本の飲食業のセオリーで接していましたが、まぁコレがぶつかるぶつかるw

  • 遅刻、早退、無断欠勤あたりまえ
  • そもそもタイムカード押さない
  • 怒られてもニヤニヤしてる
  • 店内のテーブルに座って話し込む
  • 都合が悪くなると急にタイ語しか話さなくなる
  • どんなに忙しい時でも誰かしら厨房で何か食べてる
  • 店の食材を勝手に使って四六時中なんか作って食べてる
  • みんなで結託してあること無いことオーナーにチクる
  • などなど…

今となっては、全てのことを納得せずとも理解はできますが、当時は今まで自分がやってきていた飲食業の経験が完全に通用しなくて、もうどうにもならなかったのをよく覚えています。そういえばタイ料理屋で働く前にやってた飲食業の頃は、めちゃめちゃ怖かったんですよねぇ、ボク…。当時のみなさん、ごめんねw

スタッフたちとの仲は日に日に悪くなっていきます。気がつけば、自分の分だけ違うまかない飯が出てくるようになりましたし、食べる時も1人に。みんなが食べているのは現地の人達が食べるような感じの料理をみんなでワイワイ。ボクのはメニューに載ってる料理がお客さんと同じ盛り付けで出てきてました。

さすがにコレはマズイ。と思い、当時のコック長と話をすることに。太っちょのオバチャンで名前(と当時は思っていましたが、タイ式のアダ名、チューレンですね)はプイといいました。彼女は全員から「ピープイ」と敬称を付けて呼ばれるボス的な存在で、日本も長くて日本語もそれなりに理解します。でも、意思の疎通をとれるほどではないので、フロアのアルバイトで唯一なついてくれていた女の子と一緒に話した、というか言い分を一方的に聞きました。

なぜ聞くに徹したかといえば、ここは東京だけれど東京じゃない、アウェーなんだよな、とやっと認める気になったからです。この状況は自分の今までの経験程度でどうにかなるレベルではなかったわけで。スタッフ総勢20名ほどが、全員タイ人。まかないもタイ料理。彼らはみんな同じアパートで一緒に暮らしています。言葉もわからない異国の地で、お金稼ぐために必至に暮らしているわけです。それを、日本のルールでこっちの言いなりにしようとするにはどう考えても無理がありましたし、余計に負荷をかけるだけ、関係をこじらせるだけだなぁ、と。なので、ここは素直に彼らのルールに飛び込むことにしたんです。

ピープイがいうには、

  • 料理の名前、材料や調味料をタイ語で言えないような人のいう事聞けない
  • タイ料理が好きだという割に、知っているタイ料理が少なすぎる
  • 人前で怒っちゃダメ、ニヤニヤしてるんじゃなくて対応ができないだけ
  • 忙しい時にごはん食べるのも仕方ない、お腹すいてたら働けないから
  • 食材使うのは普通、使うものは考えてるし、オーナーも知ってる
  • 特定の子に優しくしてる
  • 遅刻はこっちが悪いから直させる

他にも色々あったけど、ざっとこんな具合。

料理の名前や調味料は知っていたけれど、確かに、当時のぼくのタイ語レベルではそれを伝えることは不可能でした。『トムヤムクン』という単語一つでもなかなか通じない(イントネーションが全く違う)ぐらいなので、味の指示を出すことなんて超絶不可能。また、タイ料理は料理ごとに使うタレ(ナムチム)や、食べ方の作法などが違ったりするんですが、そのへんの知識も少なすぎました。もし自分が働いている和食店に急にフランス人の店長が来て、作ったことも食べたことすらもない料理に対して、フランス語で指示出されて怒鳴り散らされたら、確かにイラッとしたかもしれん、と反省。

怒った時の反応に関しては言われて、ハッと気づきました。結局の所彼ら、彼女らは怒られること自体に慣れてなかったんですよね。それも人前で叱り飛ばされるなんて のは、まずタイでは無いことなので。タイ人はプライドと見栄の塊みたいな部分があるので、人前で叱ったりするのはご法度です。でも、当時は全くそんな文化 も知らず。そりゃぁ、スタッフ全員敵に回すし、嫌われます。

お腹すいたら仕事できないっていうのも、確かにそうです。日本の飲食店だと飯抜きで働くなんてザラというか、それが当たり前ですが、よく考えたらそっちの方がおかしい。まぁ死ぬほど忙しい時にワザワザ食うなって話なので、休憩時間を決めて、そこで食べよう!って言ったけど、お腹すいてない時もあるから…とやんわりと拒否られwでもまぁ、食べる時間を考えていこうね、とココはお互いに妥協。食材使う部分もオーナーがOKなら問題なし。実際、それほど贅沢に使っているわけでもなかったですし。

特定の子に優しく、ってのはまさしくこの話し合いの時に一緒にいたアルバイトの子の事で、優しくしていたというよりはこの子が一番コミュニケーション取りやすかったから、必然的に多く話してた、ってだけなのですが、みんなにはそうは映らなかったようで。この辺の呼吸に関しては、こっちに来て仕事をするのに大いに役立った部分でもあります。

遅刻に関しては、すぐには治りませんでしたが、プイがみんなに怒ったので(プイ自身は一度も遅刻したことがなかった)、徐々に少なくなっていきましたし、遅れる時や休む時には店に連絡を入れるようになりました。

そして最大の難関は…そう、タイ語です。もう、毎日聞いていても、猫の鳴き声や小鳥のさえずりにしか聞こえないわけです。そもそも、単語がどこで切れるんだかも、さっぱりわからない…さぁどうしよう‥。

と、今日はここまで。次回は、どうやってタイ語を覚えていったか、的な話を書いていこうかと思います。

ボクが大昔にタイ料理屋で働いていた頃の話、前回は揉めまくってもうヤバい!となって、タイ人側のボスと話し合った、ってところまでを書きました。結構、色んな方に読んでもらえたみた