タイ料理屋で働いていた頃の話・その3

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さて、なんだか続いちゃってますが、その3です。

もう十数年以上も前になるけれど、ボクは日本にいた頃タイ料理店で働いていたことがあります。自分でタイ料理屋をオープンする直前まで、3店で都合5年ちょっとぐらい。前にも書いた通
ボクが大昔にタイ料理屋で働いていた頃の話、前回は揉めまくってもうヤバい!となって、タイ人側のボスと話し合った、ってところまでを書きました。結構、色んな方に読んでもらえたみた

前回は、厨房スタッフとの信頼関係が築けた、んでもってタイ語(というか単語)が少しずつわかりかけてきた!というところまで書きました。

その後も日々、スタッフとのやりとりの中でボキャブラリは増えていきます。わかる単語の数もどんどんと。しかし、ここでまた壁が。食材とか調味料、調理法の単語ばっかり、というかそれしか覚えてなかったのです。料理のオーダーは通せるようになりましたが、簡単な日常会話でのやりとり等は未だにままなりません。これは困ったなぁと思いつつ、昼の賄いの時にみんなにどうやったらタイ語が上達するか尋ねた所、ピープイが言いました。

『そんなん、タイ人の彼女作ればいいのよ!』

えぇえええぇえぇぇええぇぇ!って、確かにそれは一番早い上達法ですよね。うんうん。みんなはピープイの言葉を聞いて、笑いながらボクを囃し立てます。その店で働いている当時、確かにボクには彼女はいませんでした。仕事ばっかりしてましたしねぇ。とはいえ、作りましょう、はい出来ました、っていう訳にもいかないですし。そこら辺に売ってるもんでも無いです。その場では、なんとなく笑い話で終わりました。

昼の休憩が終わって、フロアに出ると、いつもコミュニケーションをとっているスタッフの子がボクの所にやって来ました。ちなみに彼女の名前は、カニを意味する『プー』です。

ガォさん、タイ人の彼女欲しい?(ニコッ

え?

さっき、ピープイが言ってたでしょ。
タイ語の上達のため!

あ、あぁ(ちょっと動揺)

実はね、私ね、前からね…

え?え?え?何!?(まさかの告白タイム?)

紹介したい人がいるの!

って、ズコーッ!キミじゃないんかいー!ボクの中のボクは確実にずっこけてました、この時。実は、このプー、めちゃめちゃ可愛い子だったんですよ。でも、普通に彼氏がいて、その彼氏も一緒に働いていたんです。なのでそういう対象ではもちろん無くて。この子だったら、いいなぁとか勝手に思ってしまったわけですね。

実は、紹介したい人は、私のお姉さんなの!

う、うん。

働いている店があるから行ってみない?

お、おぅ。

やった!じゃぁ、今日の仕事後にね!

ということで、仕事が終わったらプーと一緒にお姉さんが働いているという店に行くことになりました。このタイ人の言う「お姉さん」、実はクセモノなのです。血縁関係が無くても、親しい間柄の人は「兄/姉/弟/妹」になっちゃうのですよね。タイ語で言う「ピー พี่」とか「ノーン น้อง」です。この辺の感覚は、日本人にはなかなか理解しにくいところなんですが、同じ地方出身とか、同じ村出身なんていうとホントの兄弟姉妹よりも面倒見よく付き合ったりとか言うことも多かったりします。

店の営業が終わるのは23時で、片付けしたり、レジ締めしたりとバタバタして、全てが終わるといつも0時過ぎです。そんな時間から行って、開いてるのかなぁ、と思ったんですタイ料理屋は夕方に開いて夜中までやっている飲み屋的なところなども多いので、恐らくそういう所に行くんだろう、と思っていました。ボクもそういうタイ料理屋でちょこちょこ飲んだりしてましたし。店はどこにあるのかというと、部屋のある駅の近くだと言います。それなら面倒がなくてイイと、終電付近の電車に乗って、地元の駅へ戻ります(ボクも同じ駅に引っ越して住んでいました)。駅に着いた時は1時を回ったぐらい。しかし、こう考えると当時の労働時間、昼の休憩があったとは言え、完全どブラック、異常な世界ですねw

駅を降りると、彼女はずんずんと進んでいきます。が、その方向はその駅付近では一番店が無さそうな所というか猥雑な方向。飲み屋&ホテル街です。んー、と思いましたが、スナックの居抜きなどでやってるタイ料理屋もあると聞いていたので、そういうところかなぁ、と思いつつ一緒に歩きます。程なく、彼女が『ココ!』と言ったのは飲み屋しか入っていない雑居ビルでした。エレベータで7階まであがります。彼女は慣れた足取りで左に曲がり、突き当りの店に入っていきます。その扉の雰囲気、看板。うん、完全に飲み屋さんですね。

ボクは彼女の言う「店」はタイ料理屋だと勝手に思い込んでいたのですが、それはタイパブだったのです!当時、この辺りにはタイパブやタイ料理屋も多くて、かつてはリトルバンコクと言われていたこともあるぐらいでした。タイパブ自体は働いていた店の社長に連れられて何度か行ったことはありましたが、自分で1人で行くことなんてありません。社長と行った時も、もちろんただのお客さんとしてです。後はせいぜい、さっき書いた夜中までやってる居酒屋的なタイ料理屋で、仕事終わりに飲みに来るオネーサン達と盛り上がって飲んだり、ぐらいでしたね。そんなボクが、まさかいきなりタイパブに来るとは思ってるはずもありません。お金もそれほど持ってきてないし、そもそも仕事終わりで汗だくベトベトだし…とか色々と考えていると、プーが戻ってきて

『早く入って!』

と入店を促されました。えぇい、ままよ!と意を決して入った所、果たして…タイパブの怪しい雰囲気は皆無。というか、普通に店内の照明がついています。営業は終わっていたわけです。その煌々と照らされる照明の下で、少し古くなった店の内装がいっそうみすぼらしく映りました。奥に進むと中には10人ほどのタイ人女性たち。みな、仕事着も着替えて、あぐらかいて床に座りながら食事中でした。ボクが入っていっても特に気にせず、食事を続けています。後にわかりましたが、こういうことはしょっちゅうあったんですね。店が終わるまでいたお客さんと、そのまま店で一緒にごはん食べたり、食事に出かけたり等など。

プーが店から持ってきた料理を、その中に座る1人の女性に渡しています。

これ私のオネーサン。ピーノック。

お、おぅ。

ピーノック(小鳥、のノックです)と紹介された人は、これまたエラく可愛い人でした。床にあぐらかいて、手づかみでカオニオ(もち米)掴みながらソムタム食べてましたけど、可愛い人で。その彼女がこちらを見ながら、ペコリとワイ(タイ式の合掌)をしました。

サワディカー!

あ、、さ、さわでぃくらっぷ

アナタ ガォ サン ネー ワタシ シッテル ナー

(え、なんで?)

プー ヨク アナタ ハナシ スルナー

(え?そうなの?あ、もしかして俺を好きとか言ってる?)

ピープイ ケンカ シゴト デキナイ ナー キャハハハ!

ええぇえぇぇええぇえぇ!

嘘!ピーノック、嘘言ったらダメでしょ!

キャハハ! ジョウダン ナー!
プー アナタ イイ イッタ ナー
タイリョウリ スキ イッタ ナー

(嘘かよ!)

ということで、ホントのとこはよくわかんないんですがwこの初めて彼女にあった晩、ピーノックはお客さんに飲まされて少し酔っ払っていたようです。上記の通り、彼女はプーに比べるとおちますが、ある程度のコミュニケーションは日本語でもできるぐらいでした。その日は、そのまま食事の座に加えてもらって色々と話を聞く流れに。プーは週に何度かこうして店から食事を差し入れに来ていること、ピーノックは同じ村の出身で(他の女の子たちも、その村もしくは近辺出身)遠いけど親戚で今は一緒に住んでいること、ビザが切れてて不法滞在しながら働いている子がいること、スケベなお客さんのこと、大ママ(ママの更に上に数店舗束ねるママがいました)の彼がヤの付く自由業の方っぽいこと、等など…ドラマみたいなディープな話が多かったのです。

当時、ピーノックは27歳ぐらいでしたかね。店の他の女の子なども紹介してもらいつつ、多分3時近くまでいたと思います。当時のボクには彼女たちが話す内容は、結構なカルチャーショックでした。帰り際に電話番号を交換し、その日は帰宅します。そして次の日、ディナー営業が始まった頃、プーがツツツ、と寄ってきます。

ガォさん、ピーノックに電話した?

いや、してないよ。なんで?

なんで電話しないの!?昨日、番号もらったでしょ!!

え!?あ、うん、もらったけど、昨日聞いたばっかりd…

もう!早くかけて!今!

まさかの怒りモード。ということで、裏に入って電話します。コック達は、クックと笑ってたり。

ノックさん?

オー ソウ ヨー ガォサン ゲンキ? ゴハン タベタ?

さっき、食べたよ。ノックさんは?

ママー タベタ ナー ハハー

などと他愛もない感じで5分ほど、切り際にキョウ ミセ オイデー!と言われました。その旨をプーに伝えると、ニヤニヤとしています。なんでニヤニヤしてるんだ、といっても答えてくれません。仕方ないので、いつもどおり仕事します。クローズ後にプーが来て、今日は私行かないからねー、と伝えてきました。あれ?そうなの?若干心細くはありましたが(何しろ百戦錬磨の水商売してるタイ人女性ばかり10人近くいるわけで)、サクリと店に到着してドアを開けます。

その日は、昨日と打って変わって静かでした。照明はついていましたが、店に残っていたのはママ(名前はレック、といいました)とノックだけ。聞くと、かなり暇だったらしく他の女の子は返してしまったそうです。これも後でわかったんですが、ノックは当時この店のチーママだったんですね。レックママが言います。

ガォ、ごはん食べに行く?

どこに?

近所のお店よ!

んー、行こうか!

別段用事もないですし、そもそもちゃんとノックと話したいと思っていたので、それに従うことにしました。少し歩いて着いたお店は、ホテル街のど真ん中にある、タイ北部出身のコックがいる飲み屋的な店。当時ここにいたコックは非常に腕がよく、またママとしてそこにいた子が器量良しで、よく気の付く子だったこともあって、タイ人ホステスはもちろん、アフターで訪れる日本人も多かった記憶があります。ここで知り合ったタイ好き日本人の方も多かったですねぇ。

ここで、3人でお酒を飲みだしたのですが、気がつけばノックの身の上話を聞く流れに。ノックが日本語で説明できない部分は、レックママが通訳する感じで。

と…今回はここまで。

さて、その4です。タイ料理屋で働いていた頃の話・その1 タイ料理屋で働いていた頃の話・その2 タイ料理屋で働いていた頃の話・その3勤務先のレストランに