タイ料理屋で働いていた頃の話・その8

20160526

今までの話は、こちらから。

http://bkk9.net/thai-restaurant-stories/

ノックとともに彼女の田舎・パヤオ県に行くことに決めたボクでしたが、一緒に行くと言ってもそう簡単ではありません。彼女はお店をやめて帰るだけの話ですが、ボクは一応仕事をしていましたし、当時は連休ですら取れないぐらいのシフトでした。しかも、店ではたった一人の日本人スタッフで、お客さんとの接点にもなっていましたし、仕事自体も好きでした。とりあえず、店のボスである、厨房のピープイに相談してみることに。

カクカクシカジカなんだけどさ…

で、ガォは行きたいの?行きたくないの?

そりゃ行きたいよ。

じゃぁ、行きなさいよ。店はどうにでもなるわ。
ノックはイイ子よ。

サッパリしたもんです。少しは止めてくれるかとも思ったんですがwオーナーとも話をしましたが、感じとしてはピープイとあまり変わらず。淡々としたものです。今思えば、タイ人らしい対応だったなぁ、と思います。来る者拒まず、去る者追わず。話をした二日後には後任だという日本人スタッフが入りました。若くて、背が高くエラくイケメンで、そして、タイ語ベラベラ!というか完全にネイティブ並なのです。聞くと、タイ人と日本人のハーフとのこと、更に聞くと、なんとオーナーのお兄さんの息子さんらしいのです。この店の他の支店で店長をしているとのこと。そんな逸材が居るなら、とっとと入れてくれればよかったのに…と、今後はボクが働いていた支店と一緒に統括で見てくれることとなりました。

サクッと無職になったボク。有給が溜まっていたんですが、オーナーの計らいで、1ヶ月分の給料を丸々先払いでもらえました。これで当面の資金も問題無し。最後のアドバイスは、そうです、いつもの濱岡さんです。

カクカクシカジカで…

そうですかー。パヤオ行きますかー。湖の綺麗なイイところですよ。どれくらい行くんですか?

決めてないんですよ。

それなら、2週間ぐらいにするとイイかもです。

なぜ2週間?

それ以下では『生活している実際の雰囲気』がわかりません。それ以上だと情が移って悪い所に目をつぶるようになってしまいます。

これ、聞いた当初はあんまり意味が分からなかったんです。好きで一緒に行くんだから、情が移るも何もないよなぁ、と思って。しかし、今になってみるとこの言葉の重みが十二分に分かります。情が移るというのは、こちらからだけではないんですよね。相手からの気持ちも変わってくるんです。そして、良くも悪くもこちらを慕ってくれると、ある程度のことに対しては「仕方ないかぁ…」という感情が生まれてしまいます。正に情が移る状態です。相手側も、慕うというよりも「甘える」という感じになります。そして甘えが『当然』に変わるのにさほど時間もかかりません。ボクが今まで関わった低所得者層タイ人達の傾向として、金を持っている親兄弟親戚などの人間に対して頼るというのは、至極普通だったりします。持っている人が払うのが当然というか。ノックの彼氏ということは、ボクもそういう対象で見られてもおかしくないわけです。しかし、ボクはまだ結婚を決めていたわけでもなく、ノックに出会ってからも時間が長く経っているわけでもありません。それもあって、濱岡さんはこのアドバイスをくれたんだと思います。

チケット取ったりなんだかんだで時間を取られるので、ノックは1週間ほど先にタイに帰って、ボクはあとから一人で追いかけることに。バンコクに着いたら、国内線に乗り換えてチェンライ空港を目指せばいいとのこと。ちょうどノックのお姉さんも帰るというので、バンコクの空港で待ち合わせることとなりました。会ったこと無いんですが、一緒にチェンライ空港へ行きましょう、という事に。彼女はノックのお姉さん(実際は親戚のお姉さん)で、大阪で女の子のいる店を経営しているママだといいます(旦那さんは日本人)。ノックのお姉さんという事だし、女の子の店をやってるような人だから、きっと綺麗な人が来るんだろうなぁ、とちょっと期待していたんですが、空港に現れたのは「今くるよ」みたいなコテコテの大阪なおばちゃんでしたwお腹ちょーでてるし。性格は明るくて楽しんですけどね。とりあえず無事に落ちあって、チェンライを目指します。いびきをかくお姉さんを横目に、短いフライトです。

チェンライ空港に到着して、外に出てみてびっくりしました。なーんにも無いんですよ。今はどうだかわかんないですが、ボクが行った当時は何も無かった記憶しかないのです。って、まぁ空港なんてどこも同じようなものかもしれないですが、笑っちゃうぐらい何もありませんでした。とりあえず、荷物をガラガラとしながらタクシー乗り場へ。そこに、車のクラクションが聞こえました。

ガォ!

ノックの声です。声の方向を見ると、一台のピックアップ。運転席には男性、助手席にノック、荷台には4人ほどの子供が。いきなりわけがわかりません。助手席からノックが降りてきます。

ノッテ ノッテ!

って、どこに乗ればいいの?

ココ!

ココ!と指差されたのは、当然のように荷台でしたwそんな予感はしていましたが。乗っていた子供達はボクと入れ替わりに空港で降ります。後で聞いたところ、近所の子供でドライブがてら空港まで遊びに来たらしいです。空港内で遊ぶとのこと。あとで、子供のうちの一人の親御さんが迎えに来るんだそうです。自由。お姉さんが助手席に乗り込み、ノックとボクは荷台に。運転席の男性は、最初に見た時はノックのダンナかと思って少し構えたのですがそうではなくて、親戚のお兄さんでした。1週間ぶりに会うノックは、ショートパンツにTシャツ、サンダルと、とてもリラックスして見えました。荷台では風切音が煩くて、ロクに話もできないので二人共特に話はしません。でも、お互いの顔を見たり、手を握ったり。2時間弱ほど車に揺られた頃、やっとノックの住む村へと到着しました。

途中で広大な湖を通ったり、森の中を抜けてきたりと、かなりの自然を感じます。というか、平たく言って凄まじい田舎です。ノックの村も、決して裕福な感じには見えませんでしたが、ところどころかなりの豪邸が建っています。聞くと、バンコクや国外に出稼ぎに出て外国人(聞いたのは日本人、スイス人、ドイツ人でした)の伴侶を得た人たちが建てた家とのこと。びっくりするぐらい大きい家もありました。ほどなくノックの家に到着。なんとコレが道中で見た豪邸に負けず劣らずの、三階建てコンクリート打ちっぱなしのオシャレな豪邸でした。ノックの稼ぎとパパさんの援助で建てたらしいですが、真相はわかりません。ボクは正直、空港で出会った子どもたちや、荷台でのドライブ、道中でのやりとりなんかですでに結構クラクラきていました。バンコクとは全く違うタイ。なんというか、異文化に触れすぎてキャパオーバーになってた感じです。そのまま自宅へと案内されます。中もなかなかに豪華でした。運転手だった親戚のお兄さんに小遣いをあげるノック。彼はワイをしてそれを受け取ります。田舎に帰ってくると、ノックは完全に女王様なのがわかりました。

リビングに入ると、ノックのお父さんが座っていました。一応、タイ語で挨拶するも一瞥をくれただけで、ほぼ無視。お母さんは一応にこやかに対応してくれた記憶があります。そして、ノックが男の子を連れてきました。そう、ノックの子です。チューレンはブックといいました。ボクは勝手に小さい子を想像していたのですが、結構大きくてびっくり。後で聞いたら10歳だとのこと。ノック、かなーり早く子供産んだんですな。そして、こちらは全く目も合わせてくれません。後になって照れていたのだとわかりましたが。挨拶もそこそこに、リビングの隅にあるPCへ。オンラインゲームが好きで一日中やってるんだそうです。

とりあえずボクが寝泊まりする部屋へ案内してもらいます。3階の1室でエアコンも完備でした。この家の中で、エアコンがあるのはこの部屋とリビング、あとはノックの部屋だけでしたね。疲れもあったので、水浴びをして(シャワーは壊れていたので、大きな瓶に水が貯めてありました)サッパリ。着替えてリビングに行くと、ビールが用意されていました。ノックが買ってきておいてくれたようです。お父さんと一緒に飲みます。ボクがサクサクと飲むのを見て、お前は酒が好きか?と聞いてきました。好きですよ、と答えるとダメだな!酒好きの男はダメだ!とイイながら笑って、自分もサクサク飲みだしました。ノックはお母さんと一緒に夕飯の準備をしながら、それをちょこちょこと見ていたり。この時には、まさかあんなことが起こるなんて、夢にも思っていなかったのでした…。

続きます

http://bkk9.net/2016/06/21/thai-restaurant-story-9/

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