タイ料理屋で働いていた頃の話・その9

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今までの話は、こちらから。

http://bkk9.net/thai-restaurant-stories/

なんだかんだでノックの田舎であるパヤオ県まで来てしまったボク。道中含め色々とタイの田舎のカルチャーショックを浴びつつも、なんとかノックの自宅に到着して、夕飯に辿り着くところまで来ました。その前にビールにて晩酌をしていると、さっきまでつっけんどんだったノックのお父さんが一緒に飲みだしたわけです。酒飲みはダメだ、と言いながら自分もガブガブと飲んでました。飲みニュケーションとはよく言ったもので、大してタイ語がわからないボクと、日本語は全くわからないお父さんもなんとか意思の疎通をしつつビールを酌み交わします。最初にあった時のブスッとした雰囲気は無くなって、なんだか上機嫌なお父さんに変身です。

そうこうしている内に、ノックとお母さんが作っていた料理が出来上がり、次々にテーブルに運ばれてきました。ちなみにこのテーブルですが、木の種類はわからないもののかなり立派な一枚板で、ノックの自慢の一品でした。一体いくらしたんだか…料理はガッツリと家庭料理です。そして、タカテンと呼ばれるタイではポピュラーなイナゴの素揚げから、コオロギ・アリ・セミなどの虫料理が多数。コオロギ料理は丁寧に2種類。チクンと呼ばれる大きなもの(ナームプリックというすりつぶしたディップみたいにして野菜とかもち米に付けて食べます)と、チンリーと呼ばれる小さなもの(素揚げにしてスナック感覚で)がありました。ノックがいるので資金は潤沢ですから、他にもかなりの種類・量の料理がありました。

ガォ!リョウリ ソト ハコブ ナー

外って…どこ?

彼女が指さしたのは庭です。みると、レジャーシート的なものの上に車座で沢山の人が座っています。そして、庭の片隅には屋根の着いた部分があり、ここにカマドや焼き場もあって料理が作られ続けています。こっちでは主に煙が出る、肉や魚の料理が作られていました。気がつけば、近所の人や親戚の人なんかがドンドンと集まってきている様子。どうもノックが帰ってきたので、宴会が開かれるようです。それにしても、人が多い。みんなタダ飯・タダ酒には敏感です。

働いているのは基本的に女性ばかりで、男性はダラダラと酒を飲んだり、雑談したりと仕事らしい仕事は特に何もしません。これはタイだとドコに行っても同じ風景でしょうね。そして宴会はなんとなーく、始まっていきました。家の中からカラオケセットが持ち出され、オバチャン達が陽気に歌い始めます。けたたましく笑ったり。その横では、もちろん踊ってるオバチャンが。鯛や平目の舞い踊りとは行かないですが、かつては綺麗だったはずのオバチャン達がニコニコと笑いながら、歌い踊るのを見ているのは何だか不思議な光景でした。

後でノック聞いてみたところ、1/4ぐらいの人はそれほど知らない人だと言います。それを聞いた時には、へぇ…と思いました。まぁ昔の日本も上棟式の餅まきとかには近所のそれほど知らない人が集まったでしょうし、同じような感じかもしれないですね。村には特に娯楽もないので、こういう宴会には集まってくるのだそう。おっちゃん達も、それぞれ飲みながら楽しそうにしています。ボクは最初こそノックのお父さんと飲んでいましたが、知らない内に色んなおっちゃん達をハシゴしながら飲んでいました。飲むものもビールからタイのウイスキー(と呼ばれる、米の蒸留酒にカラメルで色が付いたもの。甘い飲み口なので、ついつい飲んじゃう。日本でポピュラーなのは「メコン」ですが、こちらでは「ホントン」とか「センソン」がそれにあたります。)のソーダ割りとか水割りになっていきました。ドンドンと酔いも回り、次に少し若めの男性グループに加わります。聞くと、みなノックと同じか少し上ぐらいで、みな奥さんがいて今日も来ているとのことです。ふと、その中のかなり酔いが回った感じの一人が、ボクを見つめて言いました。

◎×※…ニホ※%ン…◎%ジン…カ?

(ん?日本人て言ったんだよな?)そうだよ!

……。

ボクの拙いタイ語力と酔い、そして北部の訛りが合わさった早口のタイ語で理解できたのは「日本人」というタイ語だけだったので、そうだ!と意気揚々と答えたところ、その彼の目がみるみる変わっていきました。そして次の瞬間、バシャ!っと彼は自分が持っていたグラスのウイスキーの水割りをボクにかけたのです。そして早口のタイ語で罵声を浴びせてきます。突然のことで、ボクは全く反応が取れません。彼の周りにいた、2、3人の男性があわてて彼を止めて、立たせて連れて行きました。若干ざわつきますが、カラオケの音ですぐに元の雰囲気に戻ります。彼を連れて行った内の二人も戻ってきて、何事もなかったようにまた飲み始めます。騒動を聞きつけたノックが飛んできました。

ガォ!ダイジョブ!?

うん、大丈夫だけど……彼はなんで怒ったの?

ピーヤイ オクサン イナイ ナッタ ナ
ニホンジン イッショ イル ナ

彼(=ピーヤイ)の奥さんは、バンコクへ出稼ぎに出ていたのですが。そこで出会った日本人と一緒に、どこかへ逃げてしまったというのです。こっちの家族にはショッピングモールで働いていると言っていたのですが、実際はタニヤの飲み屋で働いていたとの事。かなりの額の仕送りをしていたので、彼もうすうす感付いてはいたのですが、無職でその稼ぎを当てにしていたためどうにも出来なかったそうです。彼は彼女の奥さんの家で暮らしていましたが、結婚自体は事実婚で書類は交わされていませんでした。法的には彼女は独身なわけです(子供もいませんでした)。この手の話は、タイの田舎に行くとゴマンとありますが、実際にその場に直面するとなかなかシビれます。そして、その逃げてしまったというのが最近の話だったので、彼は日本人に対してイイ印象が無かったらしいのです。

ゴメン ナ

マイペンライ。しょうがない。彼も可哀想だな…。

言いながら、ボクは自分もノックの元ダンナからしたら同じような立場なんじゃないかなぁ、と思ってしまいました。と、突然、この宴会の中に元ダンナが居るんじゃないかと心配になってきます。タイの法的には今でもノックは彼の奥さんですし、アル中&ヤク中な男と聞いていましたし。ノックに聞いてみたところ、彼は愛人と一緒に別の村にいるからこっちには来ない、との事で安心はしたんですが…とりあえず、飲み直しです。座に残っていた若者たちが新しくウイスキーのソーダ割りを作ってくれました。すると今度は、ガッシャーン!というガラスの割れる音がしました。そして複数の女性の叫び声。音は家の方から聞こえてきます。

見に行くと、部屋の中で二人の女性が取っ組み合ってケンカしています。片方の女性からは流血も…。ガラスは何かを投げた拍子に割れたようでした。次々に野次馬が集まってきます。男性陣はニヤニヤしながら、このケンカを眺めています。どうなるんだろう…と見ていると、ノックのお母さんがスタスタとやってきて、バケツでザバーっと二人に水!をかけちゃいましたwまるで盛っている犬を離すかのごとく。そして、烈火のごとく怒りの言葉が二人に浴びせられます。会った時には柔和な感じのお母さんだったのに、めっちゃ怖い!今見ているお母さんは修羅の如き形相です。ノックが怒ると怖いのは、間違いなくお母さんの血だなぁ…とその時は思ってしまいました。ちなみに水をかけた部屋は、タイル貼りですのでザーっと拭けば終わりです。タイの家は、タイル張りのとこ多いですね。

この二人はなんでケンカをしていたかと言えば、原因は「レンパイ」でした。そう、タイのローカル賭博でトランプを使ったものです。ルールは色々とあるんですが、タイ人の低所得者層は、このレンパイが本当に好きです。飲み屋のオネーチャン達も、仕事終わりにこれをやってる子多いですよね。チップをみんなこれで溶かしてしまったり。実はタイではこの賭博は完全な違法行為。トランプで遊んでいるだけならば、もちろん問題ないんですが、バッサバッサと札を放り投げながらやってるので、踏み込まれれば賭博と一目瞭然です。10、20バーツで遊んでいるあたりは可愛いもんですが(ホントはよくないけど)、それが100バーツになり、1000バーツに…とエスカレートして気がつけば30万だの50万バーツ溶かして飛んだ、みたいな事も起こったりするなかなかエグい賭博なのです。低所得者層タイ人の中ではこの「レンパイ」と「シェー(英語のShareからきてる)」と呼ばれるいわゆる「無尽」は非常に人気があります。無尽に関しては、SNSの発達でLINEやメッセンジャーを使って、更に活発に行われているとも。落札した人が逃げちゃって問題になってることも多いです。

んでもって、この日は負けが込んでいた一人が大勝ちしていた一人に100バーツを投げつけたのがきっかけで、取っ組み合いは始まったらしいです。いやはや、初日から色々起こりすぎてホントにお腹いっぱい。やっぱり田舎はDQNだらけなのだなぁ、ともう笑ってしまいました。そしてノックはここで生まれ育ったわけですから、彼女だけが突然変異でマトモになっているとは思い難いわけです。それでも、目の前で笑っている彼女の魅力にはなかなか抗えず…この日はこの取っ組み合いを見たところでお開きになって眠りにつくのでした。

続きます
http://bkk9.net/2016/07/13/thairestaurant-story-10/

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