タイ料理屋で働いていた頃の話・その10

13663449846088

今までの話はこちらから。

ボクがかつて、日本にあるタイ料理レストランで働いていた頃の話です。http://bkk9.net/2016/02/14/thai-restaurant-story/ ht

すったもんだあった宴会を抜けて、自分の部屋に戻ったボクは、とりあえずシャワーを浴びてほっと一息。ベッドに横になって、何言ってるかわからないタイのテレビをぼーっと眺めていました。そこにノックがやってきます。

ガォ ゴメン ナー

いや、大丈夫だよ。

大丈夫とは言いつつも、あまりにも色んなことが起こっていて、正直ちょっと疲れていました。また、この先、このタイの田舎のテンションについていけるのだろうかと若干の不安もあります。濱崎さんが言っていた「2週間」が頭をよぎります。まだ1日しか経ってないのに、これだけのイベントが起こるわけですから、2週間居るとどうなっちゃうんだろう…とか思ってウトウトとしていると、するするとノックがベッドに入ってくる気配。あ、服も脱いでる!え、いや、ここ実家だし、お父さんもまだ下で騒いでるし、お母さんも台所にいたし、息子のブックも階下でゲームを…

カギ シメタ ナー

ニコニコと可愛い笑顔で攻撃開始されたら、抵抗はできません…。

翌朝、目覚めるとノックが隣にいません。時間はまだ朝の7時少し前ぐらい。ザバッと水を浴びて階下に降りてみると、お母さんが料理をしています。ノックはどこに行ったかと聞くと『畑に行ってるよー!』との事。畑かー、と案じていると、お父さんが連れて行ってくれるというので、お言葉に甘えます。息子のブックは、この時間にすでに起きてきていてオンラインゲームに夢中です。

お父さんの運転するバイクにはサイドカーのような荷台が付いていて、ボクはシャベルだの、麻袋だの、肥料だのと一緒に乗り込みました。お父さんが、これまたちょー安全運転。走ったら追いつきそうなぐらいのスピードで、田舎道をトボトボとバイクで走ります。まぁのんびりとドライブを楽しむしかないですね。20分ほど走ったところで、お父さんが脇道へと曲がります。ちなみにここまで対向車・信号ともにゼロ。ホントに田舎です。しばらく進むと柵があり、道幅も広がり、扉的なものが出現。お父さんの説明をなんとか聞いていると、どうもここから先がノック家の畑らしいとわかります。畑って言っても、かなーり広大な土地です。鬱蒼とした森っぽい部分もあったり、なんだか大きな池もあります。魚を養殖しているらしいです。お父さんは、全部ノックが買ったんだぞ!と自慢気に話しています。

扉をあけて先に進むと、タイ語でサーラーと呼ばれる東屋がありました。ノックはソコに座っていました。畑や池の様子を見に来たとのこと。夜の街で見せていた顔とは違い、とても和やかで、誇らしげな顔をしていました。今まで見たことのない、ノックの顔です。お父さんは、池の様子を見に行き、そのまま、畑仕事をしたりするとのこと。聞けば、この東屋以外にも、もう少し大きなものがありお父さんはよくそこで寝泊まりするんだとか。元々あんまり人付き合いは好きじゃなくて、畑いじったりしているのが性に合うのだそうです。

ココ ゼンブ ブック アゲル ナー

そっかー

イッショ イナイ カワイソケド ココ アル イイ ナー

うんうん

ジリジリと光を増してきた朝日に目を細めながら、遠くを見るノック。彼女が場末のタイパブで働き続ける理由は、この田舎の生活だったわけです。彼女にとってかけがえのない最愛の相手は、やはり息子のブックなんだなぁ、と改めて感じます。ボクに対しての感情なんていうのは、また別の部分であって。というか、そもそも彼女の中には介在できていないんじゃないかなぁ、と漠然と感じました。でも、そんな話をしているノックの横顔は、本当にいい顔をしていたのです。

ガォ サバーイ マイ?(気分良い?)

ん?うん、サバーイ ナ(うん、良いよ)

チン ロー?(ホント?)

チンチン(ホントだよ)

和やかな東屋での時間でした。畑からは、ノックのバイクで一緒に戻ります。お父さんとは違って、暴走気味のノックの運転もこれまた恐怖でした。家に帰ると、お母さんが作っていてくれた朝ごはんを食べて、また部屋でのんびり。ウトウトっと昼寝をして、夕方ぐらいから街に出かけました。ノックの家の車で運転手はボクです(国際免許を持ってきたので)。まぁ街とは言っても、パヤオ湖周辺に、ちょっとした商店街などがある程度なのですけれどね。ノックは、場違いなほどキメキメの服を来て、バシッと化粧もし、サングラスまでして街に来ました。何でかなぁと思ったんですが、地元を離れずにそのまま暮らしているかつての友人たちに逢うからなんですね。まず商店街の中の美容室に入ります。ここで下級生に遭遇。ノックは髪を洗いたかったようです。しばしの時間美容室にて過ごします。田舎の美容院は、結構こうした洗髪利用が多かったりします。ネイルとかもやってたり。美容系全般の何でも屋的な感じです。途中、従業員含めこっちを見ながらニヤニヤしたり、ケラケラ笑ったりして話してましたが、なんのことやら分からず。実は、こっちに帰ってきてから、ノックが親戚や友人等と話す言葉は北の方言に替わってしまっていて、ボクの拙いタイ語読解能力では聞き取ることはほとんど出来なかったんです。とはいえ、あのニヤニヤはまぁ茶化してるんだろうなぁ、ぐらいにはわかりましたけどw

さらっさらの髪になってゴキゲンのノックはチップをバラ撒いて次の目標地点へ。今度は、花屋さんです。ここはオーナー女性が元同級生らしく、店に入ると早速ぺちゃくちゃと話が始まりました。ボクは手持ち無沙汰なので、なんとなく近所の店を覗いてみます。クァイティアオ屋さんを発見したので、ノックに伝えてから突入。カオソーイあるかと思って入ったんですが、無くて普通のトムヤムを。味は、まぁ普通でしたね。ある程度食べたところで、ノックが店に。今からご飯食べにいくのに、なんで食べてるの!って叱られました。なので残りは食べられず…いや、だから行ってくるって断ったのに…。

ノックは次々とお店を回ります。すべて知り合いの店。そして、ガンガンとチップをばらまいています。見栄っ張りというか、これもステイタスなんだろうなぁ、という感じです。楽しそうにしてますし、そもそも自分で稼いだお金ですからボクがどうこういう筋合いでもありません。車に戻ると、湖方面へ車を走らせます。湖畔の駐車場に車を停めて、レストランへ。生バンドが入っていて、なかなか雰囲気のいい店です。ノックが予約を入れていたらしく、すぐにテーブルに案内されます。結構、広いテーブルです。

ん?テーブル広くない?

トモダチ クル ナー

ほー、そうなのか。観光客もくるのでしょう、英語併記のメニューを眺めていると友達が到着です。なんと、女子が3人。しかも、みんなえらく可愛いし、服もメイクもキメキメです…。聞けば、ノックが小さい頃から一緒に遊んでいた仲間だとのこと。皆、一度はバンコクや国外へ出稼ぎに出て、今は実家に帰ってきているのだそう。ボクは右端に座って、隣にノック、その隣に友達。ボクの前と、その隣に友達、という感じの座組です。ハッキリ言って、キメキメな彼女たちは店の中ではめっちゃ浮いていました。

オーダーが始まります。どんだけ食うんだよ、っていう勢いで注文が続き、もちろん一緒にビールやお酒も。タイの普通の女の子は、食事の場でガンガンお酒飲むっていうのはそんなに無いんですが、ノックも友達らもガンガンです。恐らく、この友達らはバンコクで水商売をしてたんじゃないかと思いました。ノックはもちろんそうですし、友人らもその立ち居振る舞いもお酒の飲みっぷりも、なんというか素人っぽくないんですよね。やっぱり、その手の匂いは隠せるものではないです。だからこそノックも、彼女らを呼んだんだと思います。立場的に似ているというか、同じ匂いがする者同士。一般的な生活をしている人に対して、水商売を生業にしていたという若干の気後れ(といっていいかどうかはわからないですが)を感じることも無く自然に楽しめるのでしょう。

そして料理がガンガンと運ばれてきます。まぁドレもコレも美味しいし、目の前には可愛い子がたくさん。後ろは綺麗なパヤオの湖。楽しくないわけが無いです。ボクもガンガンと飲み食いを続けます。しばらくすると、男性が2名到着。彼女らの旦那さんでした。しかも、1人は昨日のノック家の宴会で、ボクが水浸しになった時に、その相手をなだめて連れて行ってくれたヤツでした。ということで、更に盛り上がる宴。ノックも酔っ払って楽しそうです。ステージのバンドにもドカスカとチップを渡してリクエスト曲を演奏してもらって踊ったり。と、パートナーがいない女友達が一人いることに気づきました。ボクの目の前に座っていた子です。名前はジンといいました。

ジン フェーン マイマー ロ?(ジンちゃん、彼氏来ないの?)

ア? マイミー フェーン ナ!(え? 彼氏いないよ!)

と言って、いたずらっぽく笑う彼女。実は三人の中で一番可愛いのが彼女だったのです。横にノックがいるにもかかわらず、若干ニヤけ気味で話すボク。とはいえ気持ち的には、ノックの友達なんだし、1人だけパートナーがいないし、ちょっと寂しそうだから気を使って話もしないとなぁ、と思ってのことでした。ボクは酔っ払ってるので、下手なタイ語でも恥ずかしさがなく、ドンドン続けて話します。彼女も酔っ払ってきてるので、ケタケタ笑いながら会話を続けます。しばらく話を続けていると、ノックがチョンチョンと肩をつつきます。

ノック トイレ イク ナー

え?あ、うんうん。

と、なんでわざわざトイレいくのに断っていくんだろう…と思いながら、話し続けていたその瞬間。

ジン!!!!!
※%あsfなおsgr@が@wrg@wrんgmwr!!!!!!

立ち上がったノックの叫び声、何言ったか全くわかりません。そして、ジャバー!!!!!なんとノックが、ジンにグラスの水をぶっかけました。その場が一瞬で凍りつきます。ボクは、あれ?これ昨日も見た感じだなぁ、とかボーッと思っていました。すぐに立ち上がって、叫ぶジン。そして、ジンもグラスの水をノックにジャバー!!!!!人生で2日連続ジャバーを見たのはコレが最初で最後です。すぐさま友人&旦那さんが取り押さえます。ボクもノックを抑えます。が、ノックはボクに平手打ち…。ボクも酔ってる勢いで、お返しに手が出そうになりますが、そこは我慢。しばらくワチャクチャしているうちに、ジンは友人の1人と店を出て行きました。ノックはうなだれてイスに座っています。

落ち着いたところで話を聞くと、結局のところは酔っ払った挙句での嫉妬でした。ジンの『彼氏はいない』という言葉が耳に入っていて、ボクが口説いているもんだと思ったみたいですね。まぁ確かに可愛いなぁ、と思いはしましたが、そもそもノックの友達だからこうして一緒にテーブルに付いているわけですし、気も使ったのに。彼女も別にボクに対して、何かしらの感情があったわけでは無いですしね。ただ、このジンという子は曲者らしく過去にも友達の彼氏を寝とったりとか、そっち方面は奔放なのも事実だったようです。

それにしても、あの瞬間湯沸し器っぷりは、本当に…個人的に東南アジアの女性、特に低所得者層の女性たちは嫉妬がキツく、そしてすぐに怒りがMAXになる気がします。まぁ機嫌が直るのも早かったりするんですけれど。タイなんて、日本で言う阿部貞的な事件、しょっちゅう起きてますからね…。あらためてwikiを読んでみましたが、阿部貞も芸者や娼婦だったんですね。何か通じるものを感じてしまったり…ぶるぶる。あ、でも阿部貞は殺してから、性器を切断してるんですね。生きてる内にちょっきんしちゃうタイ女性の方が、より怖いかも知れない…。

もとい。すっかり場はしらけてしまったので、解散となります。ボクもさっきまでの気持ちの良い酔いは覚めてしまっていましたが、運転できるほどには戻っていません。友人が送ってくれるというので、その後部座席に乗りノックの家に帰ります。ノックは肩をもたれかけ終始俯いたまま、気がつけば寝息を立てて眠ってしまっていました。空港到着から今日の騒ぎまで。自分のルールの中では考えられないことが次々と起こります。眠るノックの顔を見ながら、ボクの中で何かが少しずつ切れていきました。

続きはこちら!

ずいぶんと開いてしまいました。過去の経緯はこちらからどうぞ。http://bkk9.net/thai-restaurant-stories/友人の車で自宅まで戻